2011年6月10日金曜日
健さんの金田一
湿度の高い、田舎の縁日の綿菓子のような一日。
夕方から神保町シアターで「悪魔の手毬唄」(渡辺邦男監督/1961)を観る。タイトル以外に、横溝正史の原作と何の接点もないストーリーだったが、大変面白く観られた。なんと、金田一耕助を演じているのは若き日の高倉健。しかも金田一耕助なのにスポーティ。金田一耕助なのにクラシックなスポーツ・カーなど乗り回し、金田一耕助なのに美人秘書を連れている。ちなみに美人秘書は「名探偵保健室のオバさん」みたいな黒縁の角のとがった眼鏡をかけている。名探偵のモダニズムという線では、江戸川乱歩作品における明智小五郎のスタイルの変遷がよく議論されるものだが、この時期の日本映画界においては金田一耕助すらモダンらしい。都会からスポーツカーに乗ってやって来て、神の如き名推理を立板に水で述べ、バックには警視庁の科学的捜査の力がついている。しかも、美人秘書まで連れているのだ、美人秘書まで。そんな健さんって、どう。
いやあ楽しい映画を観たなあ、と満足しつつ、ベルギービール屋で夕食をとって帰る。神保町シアターのこの企画「美女と探偵」はうっかり見逃していたが、まだ、植草甚一の「悪魔の囁き」、久生十蘭の「肌色の月」、泡坂妻夫の「乱れからくり」の TV ドラマ版、などなどの上映が残っている。観なければ。