2011年7月9日土曜日

ハミング博士の言葉3

今日も明日も暑いらしいが、家から一歩も出ないので問題ない。 朝カレーを試してみる。午前中は、洗濯と、某科学雑誌から依頼された書評書き。 先週末から珍しく活動的だったので、ちょっと疲れているようだ。 舌が腫れている感じ。午後からは、ぼうっとして過す。 夕食はラタトゥイユを乗せて大和芋をかけた、画期的な冷やし蕎麦。

ハミング博士の講演 "You and Your Research" からの引用の三回目。訳文は私が新たに試作したもの。これで最後にします。 引用箇所は、以下のものと、ハミングが恵まれない環境を逆手にとってメタプログラミングのアイデアを得た条りと、どちらにしようか迷った。 結局、前者を選んだので後者についても少し、個人的なコメント。 確かに、「ほんとうに良い仕事」は恵まれない環境で生まれることが多いように観察される。 その意味では、夢のような環境を持つらしい google に就職できなかったからって、 がっかりする必要はない、と若者には言いたい(笑)。 有名シェフが作るランチを毎日無料で食べられるかどうかなんて、 ほんと、どうでもいい。 大事なことは、自分が面白い、エキサイティングだ、重要なことができそうだと思うところ、 または自分が、すごい、とても敵わない、ああなりたい、と思う人々(できれば二人以上) がいるところに行くことだろう。 その他の条件は瑣末なことだと思う。 デコレーションに囚われてはいけない。 私の思うに、ほとんどの人が「リアル」と言う言葉で指しているものは、 実際は、デコレーションに過ぎない。 ほんとうのリアルとは、リアルを切り離す自由そのもの、 それ以外はデコレーションだと私は思う。

先程、大樹が育つようドングリを植える話をしましたね。それが正確にどこなのか、常に分かっているわけではありませんが、何かが起こりそうな場所で活動し続けることはできます。そして、もしあなたが偉大な科学が運の問題だと信じているにしても、雷が落ちそうな山の上に立っていることはできるでしょう。安全な谷に隠れている必要はないのです。しかし、凡庸な科学者はほとんど全ての時間、安全で決まりきった仕事をしています。だから、大したことができないのです。まったく単純なことですよ。もし、偉大な仕事をしたいなら明らかに、重要な問題に取り組まなくてはいけません。そして、アイデアを持っていないと。

ジョン・テューキーや他の人の強い勧めにしたがって、ようやく私はある時から、自分が「偉大な思考の時間」と呼んでいる習慣を取り入れました。以降、金曜の昼にランチに行くときに、偉大な思考についてだけ議論することにしたのです。偉大な思考、という言葉で私が意味しているのは、「このAT&T社全体でコンピュータの役割はどうなっていくか?」、「コンピュータは科学をどのように変えていくか?」といったことです。例えば、私の観察では当時、十のうち九つの実験が実験室で、十のうち一つがコンピュータ上で行われていました。そこで私は当時の部長たちに、この割合は逆転するだろう、と意見を述べました。つまり、十のうち九つの実験がコンピュータ上で、一つが実験室で行われるようになるだろう、と。彼等は私がクレイジーな数学者で、現実感覚を持っていない、と知っていました。私は私で、彼等こそ間違っており、いずれ私が正しいことが証明されるだろうと知っていました。彼等は必要のない実験室を建設しました。私はコンピュータが科学を変えつつあることを知っていました。なぜなら、私は大量の時間をかけて自分自身に問いかけていたからです。「コンピュータが科学に与えるインパクトはどうなっていくか」、そして、「それがベル研をどう変えていくか」。同じ意味で私は、自分が退社するまでにベル研の半分以上の人が計算機と密接に関わりあうようになるだろう、とも注意しました。ええ、今、皆さん全員が端末を持っていますね。私は激しく思考しました。私の分野はどこに行くのか、どこに機会があるのか、何が取り組むべき大事なことなのか。そこに行こう、大事なことができる機会のあるところに。

I spoke earlier about planting acorns so that oaks will grow. You can't always know exactly where to be, but you can keep active in places where something might happen. And even if you believe that great science is a matter of luck, you can stand on a mountain top where lightning strikes; you don't have to hide in the valley where you're safe. But the average scientist does routine safe work almost all the time and so he (or she) doesn't produce much. It's that simple. If you want to do great work, you clearly must work on important problems, and you should have an idea.

Along those lines at some urging from John Tukey and others, I finally adopted what I called ``Great Thoughts Time.'' When I went to lunch Friday noon, I would only discuss great thoughts after that. By great thoughts I mean ones like: ``What will be the role of computers in all of AT&T?'', ``How will computers change science?'' For example, I came up with the observation at that time that nine out of ten experiments were done in the lab and one in ten on the computer. I made a remark to the vice presidents one time, that it would be reversed, i.e. nine out of ten experiments would be done on the computer and one in ten in the lab. They knew I was a crazy mathematician and had no sense of reality. I knew they were wrong and they've been proved wrong while I have been proved right. They built laboratories when they didn't need them. I saw that computers were transforming science because I spent a lot of time asking ``What will be the impact of computers on science and how can I change it?'' I asked myself, ``How is it going to change Bell Labs?'' I remarked one time, in the same address, that more than one-half of the people at Bell Labs will be interacting closely with computing machines before I leave. Well, you all have terminals now. I thought hard about where was my field going, where were the opportunities, and what were the important things to do. Let me go there so there is a chance I can do important things.