2011年9月29日木曜日

アスパラガスの美女

昨夜は就眠儀式に、「十蘭万華鏡」(久生十蘭著/河出文庫)より 「花合せ」を読んで寝た。 こういうさらっとしたのも良いなあ。 贅沢は敵だという戦時の空気が覆うなか、 全く構わず「自分のいちばんいい生活をするのがほんとう」 と言って豊かに暮らしているランチェ美女に誘われたけれども振りました、 というだけの話。しかし、飄々とした雰囲気と、 読後にぽんと放り出される感じが何とも言えない。 ところで、十蘭は着物美女の描写がどうやら凄いらしいのだが、 何せ無粋で着物も女性もあまり知らない私には、いつも良く分からない。 と言っても、洋服なら分かるかと言うと、半分くらいかな、という感じ。

ほんのざっとした身装だが、茄子紺の地に薊を水玉のように白くぬいたアンプリメの服と、 桃色珊瑚の薊の花の襟留(ラバ)が微妙なまでに調和して、 見ているうちにあだやおろそかな趣味ではないことがわかってきた。

また千子の美しさというのも、どこといって眼をうつようなところがないくせに、 見ているとだんだん美しさをましてくるというふしぎな美しさで、 花というよりは、とりたてのセロリとか西洋独活(アスペルジユ)とか、 そういう新鮮な野菜を連想させるのがみょうだった。

独活の大木は聞いたことがあるけど、西洋独活の美女は初めてだ。 ちなみに、独活はひとりでに動いているように見えるから独活って書くんだよ(豆知識)。

いつもの朝食のあと出勤。 夕方退社。 帰宅して、干し椎茸とだしを引いたあとの昆布でどんこ昆布を作る。 前回は山椒を使ったので、今度は七味にしてみた。 そのあと夕食の支度。 鰤のあら煮、酢大豆、ピーマンの焼きびたし、切干し大根と麩の味噌汁、生姜御飯。 夜は読書など。「宇宙消失」(G.イーガン著/山岸真訳/創元SF文庫) 、読了。 時々 SF 小説を読むのは精神衛生上良い、と言うか、精神の若さのチェックになる。 思えば、SF というジャンルも、十蘭と同じく著しく読者を選ぶようだ。