2011年9月11日日曜日

初秋刀魚

また熱帯夜。今日も真夏日。寝床で、 「パノラマニア十蘭」(久生十蘭著/河出文庫) より「幸福物語」と「手紙」を読んでちょっとしんみりしてから、起床。

洗濯機に洗濯を任せて、朝食の支度。 鯵のひらき、ひじきと大豆の煮物、切干し大根のはりはり漬け、 伊丹流ねこまんま。 お風呂に入ってから、しばらく昼寝。 午後は、 「パーフェクト・ライフ」(M.スチュワート著/高澤真弓訳/創元推理文庫)を読んだり、 掃除機がけをしたり。 そのあと夕方まで FM ラジオを聞きながら、 もどしておいた大豆を使ってきんぴらや酢の物など、 料理の仕込み。

夕食は今年初秋刀魚。さすがにちょっと早いだろうが、 気持ちだけでも秋を迎えるつもりで。 秋刀魚を焼いて、青き蜜柑ではなくて酢橘を搾って食す。 あはれ秋風よ情(こころ)あらば傳へてよ、 男ありて夕餉にひとりさんまを食らひて思ひにふける、と。 ところで、 佐藤春夫は酒を飲まず、食について書いたり言ったりすることを蔑んでいた。 実際、酒や食を歌った詩はほとんどない。 それでも、どうしても秋刀魚にこぼれた苦しみ、 というところに「秋刀魚の歌」の味がある。 同郷の詩人に肩入れするわけではないが、 「さんま苦いか鹽つぱいか。」 の箇所だけを安易に引用されると、 分かっちゃいないな、と一言は言いたくなるのである。 ここは、抑え切れなかった慟哭の味なのだから。