2011年9月4日日曜日

トゥ・ビー・コンティニュード

ああ良く寝た。週末用の和風朝食。 朝風呂。 今日は NHK-FM が一日ジャズ特集をしているので、 ずっと BGM に聞き流しながら、洗濯や掃除機がけなどの家事。 それ以外の時間は、"Crime School" (C.O'Connell 著/ Jove) の最後のあたりを読んでいた。あと数十ページは、 明日からの週の楽しみにおいておこう。 まだまだ蒸し暑いけれども、 個人的に夏の終わりを祝ってみようかな、と思い、 夕食はキリンの「秋味」ビールに、 ソース焼きそば、ポテトサラダなど。 ささやかでちっちゃな幸せを満喫。 自家製のザウアークラウトも順調に発酵しているみたいだし。

シリーズ第四作の「天使の帰郷」(C.オコンネル著/務台夏子訳/創元推理文庫) で西部劇のモチーフが登場したが、 第六作 "Crime School" でも再び西部劇テーマが現れ、 架空のB級西部劇小説「ウィチタ・キッド」シリーズが物語の鍵になる。 この架空の小説の主人公は通称ウィチタ・キッドと保安官の二人で、 保安官は犯罪者であるキッドを常に追跡し、 キッドは秘密を胸に秘め逃亡生活を送っている。 そして、どの巻もキッドが絶体絶命の状態で終わる。 しかし、次の巻の冒頭では思いがけない方法で危機を脱出し、 巻末ではまたしても次の危機にあう。 これが延々と繰り返されていくシリーズらしい。 昔の連続短篇映画みたいなもので、 主人公が簀巻きにされて線路に放り出され、 向こうから機関車が近付いてきたところで、 "To be continued..." となるわけだ。 架空の小説なので絶対に読めないのだが、 「ウィチタ・キッド」シリーズ、読んでみたい。 "Crime School" の終わりのあたり、 この「ウィチタ・キッド」シリーズの各々別の一冊を十五年前に読んだ老売春婦たち一人一人に、 シリーズを読破した天才チャールズ・バトラーがその「つづき」 を教える代わりに目撃証言を集める、という印象深いシーンがある。 よくこんな変なことを思いついたものだ。

「ええと、『帰郷』では、最初に死んだカウボーイが実は殺人者だったことが分かるんです。奴はギャングの仲間で、ウィチタの父親を殺し、牛を盗んだ犯人だった」
「だから、キッドの母親はダンスホール勤めになったのね、ずっと不思議に思ってた。彼女はフランクタウンで唯一、教会に通う売春婦だったんだから」
「そうですね」とチャールズは言った。「酒場で働くか、飢え死にするしかなかった。子供がいたし。それで、この本では、ウィチタは目的をほとんど果たして、フランクタウンに隠れていたギャングの最後のメンバーを追い詰める。そして決闘で殺す」
「保安官はキッドを逮捕するの?」
「いいえ」
「じゃあ、キッドは街を離れるのね、でしょ?また逃げるのね?」
「いや、今度は違うんです」チャールズは気付いた。彼女は『帰郷』がシリーズ最終巻だと知らないのだ。
「ウィチタが諦める、って言うの?」彼女はチャールズの見えすいた表情から、もっと悪い運命を読みとった。「いやよ……キッドが死んだなんて言わないで!絶対にそんなこと言わないで!キッドが死ぬなんてありえないのよ!」
部屋の中で全ての会話が止まり、十人の売春婦がウィチタ・キッドの喪に服した。

マロリーは暗闇の中に座り、目を閉じて、頭をゆっくりと左右に振っていた。
彼女には『帰郷』という本のことは思い出せなかった。

ライカーは沈黙がやむのを待っていた。やがて、売春婦たちが寄り集まった。まだ解けていない問題があったから。
「じゃあ、馬がどうなったのか教えて」ミニーが言った。「ブレイズ号は本の最後で断崖から転げ落ちた。せめて、あの馬は死ななかったと言って」
「そうだな、ブレイズの奴が酷い目にあったらしいことは俺も知ってるよ。だが、あの馬は次の本でまた登場する。実は、あのインディアンの少女が……」
「灰色鳥ね?ウィチタ・キッドのことが好きだった。キッドはほとんどの本の中で、あの娘の話をするのよ」
「そう、その娘だ。彼女は魔法と薬草で馬を看病する。その娘は身代わりに死ぬが、馬は新品同様に元気になるのさ」
「ロマンチックじゃない?」
「ああ」

"Crime School" (C.O'Connell/Jove) より。訳文は原による。