2010年8月15日日曜日

金色夜叉

最近、夜更かし気味なので起床は 9 時頃と遅かった。 珈琲と蜂蜜入りのヨーグルトで目を覚まして一服してから、 朝昼兼用食の支度。 鯵のひらき、香の物、オクラと茗荷の味噌汁、御飯。 私が以前に書いた論文について、 イギリスの大学院生からメイルで問い合わせが来ていたので対応。 お風呂に入ってから、 ヱビスビールとボッケリーニのチェロ・ソナタをおともに、 リビングの床に寝転んで読書。 「金色夜叉(上・下)」(尾崎紅葉著/岩波文庫)とか。

「金色夜叉」は地の文が華麗な文語調で今の人にはちょっと読み難いのだが、 抜群に面白い。 明治時代の人が読売新聞のこの連載を毎日楽しみにしていたのも、 もっともだ。 読者をぐいぐいと引き込んでいく筆力はただごとではない。 大体、復讐譚には不思議な魅力があるものだが、 ストーリィ自体の通俗性に増して、 その場面一つ一つの演出のうまさや会話の巧みさなど、 むしろ文章力がその秘密のような気がする。 何か面白い小説を求めている人には是非、おすすめしたい。 おそらく「金色夜叉」という奇妙なタイトルと、 海岸で学生服の男が着物姿の女を足蹴にしている場面だけしか 知らない人が多いのではないだろうか。もったいない。 ああ、あれは一高生の貫一が、 金に目が眩んだ婚約者のお宮が富豪に嫁いだのに怒って、 彼女を蹴り飛ばしているシーンだよ、とまでは知っている人も、 それが長い長い未完の小説のごく冒頭のエピソードに過ぎないことを 知っているだろうか。 貫一が、今月今夜のこの月を……の文句を吐いて失踪したあと、 どうしたか知らないんじゃないだろうか。

夕食はアボカドの散らし鮨、北京風酢豚の残り、茗荷と大葉と卵の御澄まし。 白ワインを一杯だけ。