2012年1月8日日曜日

カジノの内と外

今朝は良い天気。 珈琲、チーズ蓬餅、ヨーグルト、果物の朝食。 朝風呂に入って、湯船で読書。 昼食は親子丼、春菊のおひたし、大根と麩と浅葱の味噌汁。 午後は少し神保町を散歩してから、某所にて勉強会。 その後、夜は同じメンバで会食。

「競争優位で勝つ統計学」(J.マー著/須川綾子訳/河出書房新社)を読む。 MIT の学生たちがカード・カウンティングと数学を武器にブラックジャックで大儲けをする 「ラスヴェガスをぶっつぶせ!」の主人公のモデル、 ジェフリー・マーによるビジネス本。 マーの偉いところは、確率論や統計学を使って金融市場で儲けようと 「しなかった」ところだと思う。 確率論や統計学は確かに、純粋なギャンブルに対しては強力な武器に、事実上、最終兵器になる。 (多くの場合、結論は「そのギャンブルをしてはいけない」or「胴元になれ」だが。) しかし、一度カジノの外に出ると、その力は一気に弱まる。 20 世紀末あたりには多くの優秀な数学者の卵が、金融市場で一儲けしようとしたものだが、 金利や株価はカードやサイコロやルーレットとはまるで違う。 そこにはルールや枠組みや前提の恣意的かつ頻繁な変更、情報の激しい非対称性など、 少くとも現状の数学で扱い切れない問題が数え切れないほどある。 それなら、純粋なギャンブルの方が安全で確実だ、 ときっぱり判断したところが偉い。

著者は今ではスポーツ賭博の世界でビジネス展開しているようだが、 それも優れた判断だと思う。古典的な統計学や確率論の応用先をカジノの外で探すことになれば、 有力なフィールドの一つはスポーツ賭博だろう。 ちなみにこの本は、そんな著者がビジネスに統計学を使う方法を指南する、 という意味で矛盾であり、 ギャンブル的状況での心構え指南という以上には役立たない。 その矛盾を認識することが、この本を読む価値だろう。