2011年10月31日月曜日

また父からの手紙

朝食のあと出勤。 予想通り株価は一直線にストップ安をつけて引け、 時価総額の二割、およそ四十億円が失われた。 とは言え、オフィスは特にいつもと変わった様子はない。

帰宅したら、また父から手紙が届いていた。 飼っていた犬が(老衰で)死んだそうで、その報せ。 そしてまたしても、手紙は一句で締め括られていた。 「行路難、不在水不在山、秪在人情反覆間」。 今度は漢詩で来たか。 百楽天と書いていたが、もちろん白楽天の書き間違いだろう。 そして、私が訳するに、 「旅路の難儀は、海や河にあるのでもなければ山にあるのでもない、 ただ人の心の移り変わりの間にあるのだね」。 相変わらず、ありがたいようなありがたくないような、 何を言いたいのか良く分からない引用だ。 毎回、微妙に間違えているし。

お風呂に入ったあと夕餉の支度。 夕食は御飯を炊いて、 高野豆腐の溶き卵とじ山椒風味、里芋の煮物、ちりめんじゃこ、油揚げと若布の味噌汁。 食後に緑茶とどら焼。

2011年10月30日日曜日

小数の法則と「DL2号機事件」

洗濯を洗濯機に任せて、その間に朝食の支度。 クレソンのサラダと、カレーライス。 お風呂に入って、湯船で "Judgement under uncertainty: Heuristics and biases" (Ed. by D.Kahneman, P.Slovic, A.Tversky / Cambridge) より、(行動経済学の)「小数の法則」についての論文などを読む。 (ところで、数学では「小数の法則」を別の意味に長年使っているので、 同じ名前を使われるとちょっと混乱する。) 昼食は煮麺(玉葱、若芽)。 午後は私的プロジェクトの作業、読書、料理の仕込みなど。 高野豆腐と里芋をそれぞれ煮た。 夕食は、前菜にマカロニサラダ(玉葱、胡瓜、人参、フジッリ)、 メインに骨付きラム肉を塩胡椒だけで焼き、 付け合わせにポテト、ブラウンマッシュルーム、クレソン。 こちらもすべて塩胡椒のみだが、粒マスタードも添える。 食後にチョコレートチーズケーキと紅茶。

上の論文を読んでいて泡坂妻夫の「DL2号機事件」という短編小説を思い出した。 サイコロを振って、1の目が出たとしよう。 このときに、次も1の目が出るだろう、と思う人と、 次は別の目が出るだろう、と思う人の二通りがある、 というようなことが書いてあったと思う。 このどちらかだと思ってしまう、というところが人間の思考の奇妙なところである。 真実はどちらでもないのだから。 昔海軍で船が砲撃されたときに、 あえて砲撃でできた穴に逃げる兵士がいた。 同じ場所に着弾する確率は低いから、と。 我々はこのジョークを笑う。 しかし、既に着弾した場所も他の場所も、次に着弾する確率は同じであり、 論理的には笑うべきところはない。 つまり我々の多くは、ランダムネスを近視眼的な「公平さ」 の形でしか理解できない。 そうでなければ、もっと悪く、「ツキ」の言葉でしか理解できない。

2011年10月29日土曜日

一宿一飯

昨日の午後、市場がクローズしたタイミングで、 業績予想の下方修正と社長兼CEOの引責辞任の発表があり、 激震の週末。 末端社員の私から見ると、この数年どこまでも巡り合わせが悪かった、という印象なのだが、 もちろん社長は「ツイてませんでした」で済まされない。それがトップというものだ。 おそらく、レイオフの大鉈をふるったときから、 辞任の覚悟があっただろうと思う。 ただ私は個人的に、 たとえ辞任を申し出ても、この会社を率いる人が他にいないという理由で、 しばらくは続けざるを得ないだろう、とまさに昨日の午後まで思い込んでいた。 実際にはCFO(最高財務責任者)が新社長になったのだが、 3Q の決算発表を待たずして、 市場はこれを経営陣からの「メッセージ」と捉えるだろう。 その反応は月曜日待ちだ。

前社長が一昨年亡くなり、社長が昨日辞任して、 大学に職を見つけるまでの若き日の私を拾ってくれた創業者二人が会社からいなくなった。 長年、秘かに恩義を感じ続けてきたのだが、いまだそのお返しをできないことを、残念に思う。

2011年10月28日金曜日

考え事

爽やかな朝だ。 珈琲、トースト、ベーコンエッグ、マカロニサラダ、 ブルーベリージャムとヨーグルトのいつもの平日朝食。 お弁当を適当に詰めて出勤。 昼食は持参のお弁当。韮レバ炒め、大豆きんぴら、蕪の甘酢漬け、 自家製ふりかけ御飯。

少し手詰まり気味だし、ちょっと考えたいこともあったので、 午後早々と退社。 銀座をぶらぶらしながら考え事。 しかし、銀座というところはあまり考え事に向かない場所で、 やっぱり神保町に戻って散歩。今は、古書祭の最中だ。 夕方になって、 くたびれやさぐれた中老年サラリーマンの集う、中華料理屋へ。 この店で私が食べたいベスト3、 砂肝の大蒜唐揚げ、皮蛋、水餃子の夕食。 変な組み合わせではあるが、欲望に忠実に。

2011年10月27日木曜日

サインコサインなんになる

いつもの朝食のあと出勤。 昼食は持参のお弁当。大豆きんぴら、鶏肝生姜煮、胡瓜のピクルス、自家製ふりかけ御飯。 夕方退社。帰宅して夕食の支度。 前菜にカルボナーラのあと、小さな骨付きラム肉を焼く。 火を止めて肉の内側に熱を通している間に、つけあわせの仕上げ。 ポテト、ブラウンマッシュルーム、大蒜、もやし。 何故だか色合いが寂しいなあ……と思っていたら、 食後になって、クレソンも買ってあったのを思い出した。失敗。 夜は読書と、少し料理。マカロニサラダを仕込んだ。

昨日の「反ったレール」問題の解答:
真面目にやると三角関数が必要になるので、雑な近似をしてみよう。 レールの曲がりはわずかなので、 地面とレールのなす円弧をひらべったい二等辺三角形と思ってよかろう。 底辺の長さは 999.9 メートル、他の二辺の長さは 500 メートルずつ。 この高さはピタゴラスの定理よりただちに求められて、約 7 メートル。 これは大きく見積った値なので、答は 6 メートルくらいか。 わずか 10 センチしか縮めていないのに、けっこう大きい。 この意外性の理由は、一つには「赤道ロープ」の問題と同様に、 問題の背後に巨大な「半径」が隠れていること、 もう一つには sin θ と θ が非常に近いことがある。 真夏に暑さでレールが伸びて大きく曲がったりするのには、 こういった数学的な事情があるのです。

上の雑な計算がどれくらい良い近似なのか議論しようとすると、 どっちにしろ三角関数の知識が必要になる。以下では、厳密に求めてみよう。 この円弧の中心角をθの二倍、円の半径を R とおくと、 円弧(つまりレール)の長さが R かける 2θ、 弦(つまり地表)の長さが 2R sin θで、この比が 1000:999.9 に等しい。 これよりθが決まり、さらにRも分かって、 答は R の 1 - cos θ 倍として得られる。 ここまでは高校生でもできるが、具体的に数値を得るには (計算機を使うか)近似計算をするしかない。 この知識はオトナ向けだろう。 sin θをθそのもので近似することが多いが、 今の場合はレールの長さと地上の距離の関係がこの近似に対応しているので、 より高いオーダが必要になる。 しかし、めげずに実行すると大体 6.12 メートル強、くらいの結果が得られる。 この近似値は真値に非常に近い。

2011年10月26日水曜日

反ったレール

昨夜、カクテルを二杯飲んだので、朝が少し辛い。 ちなみに、ギムレットと XYZ。昔から XYZ が好きだ。 あまりアルコールが飲めない私は、間を持たせるため、 XYZ の方はロングカクテル風にしてもらった。 いいシェリーをちょっと入れたりして、洒落てるね銀座は。

いつもの朝食のあと出勤。 昨日は暑いくらいだったのに、今日は急に十度近くも気温が下がった。 昼食は持参のベーグルサンドウィッチ(ポテト、胡瓜、ベーコン)。 夕方退社。 帰宅して、夕食の支度。 豆鯵の煮付け、玉葱大豆、韮レバ炒め、蕪の甘酢漬け、 里芋と油揚げの味噌汁、御飯。

地球の赤道にロープをぴったり巻きつけてのち、 そのロープを1メートルだけ伸ばしたとすると、 ロープと地表にどれだけ隙間ができるでしょう、 という問題は良く知られている。 ほんのちょっとしか浮かないように思えるが(例えば、0.1 ミリくらい?)、 実際に計算してみると、けっこうな高さになって驚く。 しかし良く考えると、 円周の長さと直径は正比例しているのだから、 円周が伸びるのと同じ比率で直径も伸びるのであって、 つまり、円周を伸ばした長さと同じオーダの長さの隙間ができるのは、当たり前だ。

では、上級編。 今、全く平らな地面に、1 キロメートルの長さのレールが置いてあります (地球の表面が曲がっていることは考えなくていいです)。 これを両端から押したところ、10 センチだけ両端が近付いて、 レールが円弧形に上に反りました。 レールの中央は地面からどれくらい浮いているでしょう。 厳密に求めるもよし、「封筒の裏」での見積り計算の腕を発揮するもよし。

2011年10月25日火曜日

「全て」

あなたは私の人生の光じゃない
あなたを幸せにすることが私の一番の夢じゃない
あなたの微笑みだけが私の生きる目的じゃない
私は自分自身やっていくことがあるから
でも、あなたは奇妙で、魅惑的で、あなたのような人には会ったことがない
私はあなたに全てを与えたい
ただ、それであなたが何を「する」のか、見たいから

(そして、あなたのジャイロコプタから振り落とされないよう、その手を握っていたい)

xkcd.com "Everything" より。 原による試訳。

こんなことを言ってみたいものだし、言われてみたいものだね、ほんとうに。

いつもの平日用洋風朝食のあと、お弁当を作って出勤。 昼食は持参のお弁当。ポテト、玉葱、胡瓜、ベーコンのベーグルサンドウィッチ。 夕方退社して、近所のカフェで 「ミシェル・フーコー」(重田園江著/ちくま新書)を読みながら一服。 夜は久しぶりに、ネットワーク・ハッカーのNさんと会食。 新橋の路地裏の天ぷら屋にて。

2011年10月24日月曜日

粒と影

変に暖かい日が続くなあ。 珈琲、トースト、ハムエッグ、菠薐草ソテー、柿とヨーグルト。 昼食は持参のお弁当。自家製ふりかけ御飯、大豆きんぴら、鶏肝生姜煮、蕪甘酢漬け。 帰りが少し遅くなったので、手抜きのタンメン(玉葱、韮、もやし、油揚げ)。 大人になるまで「タンメン」を知らなかったのだけれど、関東圏のものなのかな。

昨日のポーカーハンドの問題の解答。
フォーカードとは正確に言えば、「同じ数字の四枚」ではなく、 「同じ数字の四枚プラス何でも良いもう一枚」である。 だから、同じ数字が四枚のそろい 13 通りのそれぞれに対して、 もう一枚の選び方が 52 - 4 = 48 通りあり、 全部で 13 かける 48 通りの可能性がある。 これはストレートフラッシュの 40 通りよりずっと多い。

わざと間違った考え方に誘導する、 どちらかと言えば引っ掛け問題の類だが、 それでも教訓はある。 二つの確率や可能性を比べるときには、 その粒がそろっていなければ意味がない。 そのためにはしばしば、その「影」の部分までコミに考える必要があるが、 どうしても盲点になりがちである。 この間違いは思っている以上に多く、 あちこちで深刻な害をなしているような気がする。

2011年10月23日日曜日

ポーカーハンドの問題

和朝食。 豆鯵、玉葱大豆、蕪の甘酢漬け、菠薐草と油揚げの味噌汁、御飯。 夜は浅草にて、友人のアニメータの結婚披露宴。

blog "Futility Closet" に次のような問題が紹介されていた。

ポーカーの手の「フォーカード」は A のフォーカード、2 のフォーカード、……、K のフォーカードで 13 通りしかなく、 一方で「ストレートフラッシュ」は 40 通りあるのに、 「ストレートフラッシュ」の方が強い手とされているのは何故でしょう?

お恥ずかしながら、すぐに分からなくて、答を見てしまいました。 プロバビリストとして、本当に恥ずかしいです。 寝起きでぼうっとしていたのだ、と信じたいが、 痴呆が進行しているという可能性も捨てきれない。 いや、確率というものはいかに初等的な問題でも、 国内屈指の確率的思考のプロすら(私のことですよ、念のため)、 時にうっかり見落しをするほどトリッキィなのだ、 と日記には書いておこう。

答は明日。どうしてもすぐに知りたい方は、上記リンク先の "Futility Closet" 内で探して下さい。

2011年10月22日土曜日

雨降り

また十時間以上寝てしまった。雨の夜は良く眠れる。 珈琲を飲んで目を覚ます。雨。今日は一日、続くらしい。 とりあえず御飯を炊いて朝昼食の支度。 豆鯵の煮付け、ひじきと大豆と人参の煮物、蕪の甘酢漬け、菠薐草と油揚げの味噌汁。 さて、今日は何をしようかなあ。

とりあえず書庫を歩いて 「死の接吻」(I.レヴィン著/中田耕治訳/ハヤカワ文庫) を手にとり、朝風呂に入る。雨降りだからミステリでも勉強しよう。 午後は読書をしたり、書き物をしたり。 夕食の支度。 ポトフに飽きてきたので、 スパイスを加えてカレー風味にする。 鶏肝ソースのスパゲティ。食後に柿とヨーグルト。 夜は鶏肝を酒と醤油と味醂と生姜で煮たり、大豆のきんぴらを作ったり、仕込みを少々。 お風呂に入って湯船で 「アインシュタイン論文選 『奇跡の年』の5論文」(A.アインシュタイン著/J.スタチェル編/青木薫訳/ちくま学芸文庫) より、 スタチェルの「『奇跡の年』100周年に寄せて — 青春のアインシュタイン」を読む。

2011年10月21日金曜日

凶暴な猫

曇り空。夜から雨になるとか。 珈琲、ポトフ、目玉焼き、胡瓜とハムのホットサンドウィッチ、柿を一つ、 の朝食のあと出勤。 東京はずいぶんと冷えてきた。太陽が隠れているせいもあるが、肌寒い。

並行化プログラミングって難しいな……。 昼食は持参のお弁当。自家製のふりかけ御飯に、豆鯵を煮たときの梅干し、ひじきと大豆と人参の煮物。 午後は主にドキュメント書きなど。 夕方退社して、近くのカフェで "Dead Famous" (C.O'Connell 著 / Berkley Novel) を読みながら一服。 マロリー・サーガには凶暴な猫の登場率が高いような。 今回は、傴僂の障害を持つ清掃員の女性で、実は逃亡中の聡明な精神分析医、 というオコンネルらしい登場人物の飼い猫として登場。 名前は "Huggermugger" 略して "Mugs". ちなみに彼女と猫が潜伏しているのは、かのチェルシー・ホテル。

夕食は、労働者の週に一度の贅沢として、近所のベルギービール屋にて。 トリッパときのこの煮込み、銀杏ときのこのアーリオオーリオ。 帰宅して、お風呂に入る。 ロイヤルミルクティーを作って、ほっと一息。

2011年10月20日木曜日

まめあじ

いつもの朝食のあと出勤。 昼食は持参のサンドウィッチ。胡瓜とハム。 夕方退社。 財政緊縮のため、なかなか動物性たんぱく質に手が出ない。 これも、人口の 1 パーセントの金持ちのせいだろうか。 百人に一人というのは「ぼくたちの周りにはいないよね?でも、そんな人たちが近くにはいるんだよ」 と思える絶妙の割合なのだろうなあ……などと魚棚の前で思う。

いや、それはさておき、切実な問題なのは、残りの 99 パーセントに属する私の今日の夕餉の食卓だった。 先月、東京砂漠の生活を憐んだ知り合いが送ってくれた音戸のちりめんじゃこが沢山あるのだが、 食卓には彩と変化というものが必要だ。 聖橋から飛び降りるくらいの気合で、豆鯵を十匹買い、帰宅。 豆鯵と言っても、じゃこに比べればくじらなみに大きいしね。

豆鯵もちゃんと作れば鯛の味。偶然ながら五七五。 さっと霜降りをしてから、酒が多めの煮汁で梅干しと一緒に煮る。あとで生姜も。 あじな魚というだけあって味は良かったのだが、 老眼で小骨が見えない、という重大な問題が! 他に、ひじきと大豆と人参の煮物、蕪の甘酢漬け、切干し大根の味噌汁、御飯。 柿が一つ熟し過ぎて溶けかかっていたので、ヨーグルトとあわせて食後のデザートを作る。

2011年10月19日水曜日

関節の外れた時代

「世界の運命」(P.ケネディ著/山口瑞彦訳/中公新書) を読んでいて、 「関節が脱臼している」時代という表現は、 シェイクスピアがもとだったのかと気付く。 しかも「ハムレット」。 吉田健一がそんな表現を使っているのを読んで、 うまいことを言うものだな、と思っていた。 シェイクスピアは引用したとあえて断わる必要すらない、 基礎教養ですよね……。 それはさておき、今の日本の政治状況って、 関節が外れている、としか言いようがないような気がする (珍しく社会派だね)。

カフェオレ、トースト、ポトフ(じゃが芋、人参、ザウアークラウト、ソーセージ)、 目玉焼き、林檎ジャムとヨーグルト。 朝食のあと、お弁当を作って出勤。 昼食は持参のお弁当。自作ふりかけ(ひじき、鰹節、じゃこ、胡麻) の御飯、ハム、玉葱大豆、昆布の佃煮、胡瓜のピクルス。 夕方退社して、神保町のカフェで一服。珈琲豆も購入。 近所のスマトラカレーの店で夕食をとってから、 恵比寿に向かう。

写真美術館で開催中の第二回東京ごはん映画祭より、 映画「ディナー・ラッシュ」(B.ジラルディ監督/ 2001 年) を観る。 今、終わった頃。

2011年10月18日火曜日

1905

昨夜仕込んでおいたポトフ中心の朝食。 他に珈琲、トースト、目玉焼き、林檎ジャムとヨーグルト。 お弁当用に、胡瓜とハムのサンドウィッチを作って出勤。 夕方、退社。 夕食は、大豆とひじきと人参に煮物、玉葱と胡瓜のピクルス、 薩摩揚げ焼きに生姜醤油、オクラの味噌汁、御飯。 食後に和歌山の種なし柿。

湯船で「アインシュタイン論文選 『奇跡の年』の5論文」(A.アインシュタイン著/J.スタチェル編/青木薫訳/ちくま学芸文庫) を読む。 ペンローズの短い序文がピリッと効いているし、 スタチェルの解説も充実、 そして「奇跡の年」の 5 論文を収めて、 千三百円は大変にお買い得。 訳者あとがきの、 ニュートンの「プリンキピア」との比較も面白い。 まあ、個人的には、「プリンキピア」の深さ、大きさ、凝縮度からして、 アインシュタインの論文の鋭い一編の詩のような性格 (これは最上級の賛辞です。念のため)と比較するのは、 やや筋違いかな、とは思いますけれども。

2011年10月17日月曜日

一七五五年、リスボン

いつもの朝食のあと、久しぶりに出社。 昼食は持参の、胡瓜のサンドウィッチ。 昼休憩の散歩の途中、新刊書店で 「アインシュタイン論文選 『奇跡の年』の5論文」(A.アインシュタイン著/J.スタチェル編/青木薫訳/ちくま学芸文庫)、 「世界の運命」(P.ケネディ著/山口瑞彦訳/中公新書) を買う。

夕方退社し、食材を買って、帰宅。 お風呂に入って、湯船で「世界の運命」を読む。英国流のインテリだね。 ジョージ・オーウェルがかつて連載していた「私の勝手」の正統な後継者かも知れない。 もちろん、オーウェルよりずっと温厚ではあるけれど。 御飯を炊いて、だしをひき、夕食の支度。 大豆とひじきと人参の煮物、薩摩揚げ、冷奴、蕪の甘酢漬け、 オクラの味噌汁、御飯。 夜は、じゃが芋と人参とザウアークラウトとソーセージのポトフを仕込む。 朝食用。

私は今年、欧州で最も美しく興味深い場所の一つである、 ポルトガルのリスボンを再訪することにしている。 実は、はるか昔の一七五五年に、 リスボンの中心部は凶暴な地震と津波によって壊滅した。 そして多くの住民は、世界が終わったように感じたのである。 だが、そうではなかった。 多大な費用と年月を要したものの、リスボン市民は、 破壊された中心部を再建し、以前よりもっと美しい街にしたのである。 人類は、偉大なことを行う才能を持っている。 日本の友人たちもまた、その同じ偉大さを見せてくれるに違いない。

二〇一一年、五月 ポール・ケネディ

(「世界の運命」(P.ケネディ著/山口瑞彦訳/中公新書)、「まえがき」より)

私も昔、リスボンに行ったことがありますが、 海に面した七つの丘に彩られた美しい港街でした。 鮟鱇鍋(もちろん肝入り)が美味しかったな。 一七五五年のリスボン大地震では、 街ごと文字通り壊滅、 全市民の三分の二にあたる六万人が亡くなった、 ということを今日初めて知りました。

2011年10月16日日曜日

秋刀魚と大根の問題

珈琲で目を覚まして、朝食の支度。 薩摩揚げを焼いて生姜と醤油、蕪の甘酢漬け、どんこ昆布、ちりめんじゃこ、 長芋のとろろ汁、御飯。 洗濯機に洗濯を任せ、 朝風呂に入ってから、二時間昼寝。 昼食を食べようにも、休日はいつも以上にエネルギィを使わないので、 お腹が全く空かない。太るのって難しい。

午後は掃除機がけなどの掃除と、少し書きもの。 夕方になって食材の買い出し。 秋刀魚は一匹百円以下に落ちてきたが、大根がやたらに高い。 秋刀魚には大根おろしが定番のはずなのに、 よく考えると、季節がずれているではないか。 季語事典を見なくても、秋刀魚は秋、大根は冬だ。 かと言って、秋刀魚を冬まで冷凍するようでは、季節を疎かにする。 ひょっとして秋刀魚と大根は、 気取った食通が鱧と松茸のお椀なんかを前に蘊蓄を講釈するところの 「であいもの」なのだろうか。

帰宅して、夕餉の支度。 秋刀魚の塩焼き、茄子とオクラを焼いて生姜醤油、 冷奴にもろみ。そのあと蕎麦を茹でて食べる。 夜は料理の仕込み。 お風呂に入って湯船で "Dead Famous" (C.O'Connell 著 / Berkley Novel) を読む。

2011年10月15日土曜日

GPS と特殊相対性理論

珈琲で目を覚ましてから、朝食の支度。 長芋のとろろ卵かけ御飯、ちりめんじゃこ、蕪の甘酢漬け、どんこ昆布、 切干し大根の味噌汁。 昼食はカレーライス、胡瓜と玉葱のピクルス、 林檎ジャムとヨーグルト。 出張先でも、激痩せっぷりを色々な人に心配していただいたことだし、 積極的に食べよう。 夕食のメインは秋刀魚。アイ・ラヴ・サンマ。 他に冷奴、ちりめんじゃこ、蕪の甘酢漬け、若布と麩の味噌汁、御飯。

ニュートリノが光速より速く運動したかのようなデータが観測されたのだけれど、 これ如何に、というニュースが少し前にマスコミを騒がせた。 このパズルはまだ未解決だが、ちょっと面白い 指摘(The Physics arXiv blogより) がプレプリントとして発表されていた。 念のために書くが、もちろん一つの可能性に過ぎず、 これが正解である見込みは低い。

わずか 4 ページのそのプレプリントを見ていただければ分かるが、 主張はとても簡単で、ほぼ一言で説明できる。「ローレンツ収縮」だ。 実験では、単純に言って、ニュートリノが出発したときと到達したときの時刻を測り、 この間の時間で距離を割り算して、速度を計算する (えーと、小学校では「は・じ・き」の公式とか言うんだっけ)。 ここで大きな問題の一つは、「時計あわせ」である。 どうやって、出発点と到着点に完全にシンクロした時計を置くか。 この実験では、時間を GPS 人工衛星の時計で測ることで解決した。 しかし、特殊相対性理論によって、 地上のニュートリノの旅程の方向に運動している人工衛星にとっては、 ニュートリノが移動する距離が縮むのだった。 この収縮した距離ではなくて、地上の距離を使って計算するなら、 その誤差に応じて人工衛星の時計で測った時間を補正する必要がある。 これを勘定に入れていましたか、 と言う指摘である(私の理解が正しければ)。

ややこしいのは、 そもそも GPS 自体が既に自分で時間を補正していて、 相対性理論が大いに使われていることだ。 例えば、言わゆる「ウラシマ効果」、 特殊相対性理論による時間のおくれの効果は既に補正済みである。 地球の重力場および地球の自転の影響による時間の伸縮も、 一般相対性理論を用いて補正されている (GPS ってすごいね)。 何と何がどこで補正されていて、何が考慮済みで、 互いにどう影響を与えあうのか。 実験物理のプロ中のプロ、ベスト・アンド・ブライテストの OPERA チームでも、 (上のような単純な話かどうかは別として) 相対論の「時計あわせ」まわりで何か見落すことがないとは言えない。

考えていると段々と混乱してきた。久しぶりに、 岩波文庫の「相対性理論」(A.アインシュタイン著/内山龍雄訳)で 「動いている物体の電気力学」を読み直そうかなあ。

2011年10月14日金曜日

ビジネスホテル

研究会の二日目。 早朝にチェックアウトして、伊都キャンパスへ。 会社の経費なので、 ほぼ最安値と思われる天神のビジネスホテルに泊まっていた。 最近のビジネスホテルって綺麗で悪くないね。 朝食を部屋に持ってきてくれないことを除けば、だけれども。 研究会は夕方終了。帰路につく。

2011年10月13日木曜日

伊都キャンパス

伊都キャンパス、遠い。 最近よく大学が田舎に新キャンパスを開くけれど、 どうしてなんだろう。 最適化理論の研究会に参加。 半正定値計画の話題が多いみたい。

あ、そうだ。雑誌「数理科学」に 「Amazon ランキングの謎を解く」(服部哲弥著/化学同人) の書評を書きました。 多分、今月下旬に発売される 11 月号に掲載されるはず。 ちなみに 11 月号の特集は「線形から非線形へ 〜 数学と物理の世界を拡げるキーワード」だそうです。

2011年10月12日水曜日

Voici la belle saison

朝、窓を開けてから、珈琲をいれて朝食の支度。 いい季節になった。 自分以外の誰もが、山鳩のようにクークー身体を擦り合わせて、 楽しく幸せに暮らしているような気がする、 爽やかで素敵な秋の朝だ。

またいい気候の季節が来た
閉した窓を開け放すと
家々の
二階と
階下とで
話をする
声がきこえてまいります

J.コクトー「いい気候」(堀口大學訳)

自宅で少し雑用をして、昼食ののち、博多に移動。

2011年10月11日火曜日

深いC

目覚しの珈琲。秋の涼しさでいくらでも寝られるところだが、 朝のタイプ打ち仕事をしなければ。 夜明けの鐘はKOゴング、打たなきゃ昨日に逆戻り(「ジョーの子守唄」より)。 いつもの朝食のあと、出勤。 昼食は持参のお弁当。ロースハムと自家製ザウアークラウトのサンドウィッチ。 夕方、退社。 お風呂に入ってから、夕食の支度。 蒸し鶏に玉葱のピクルスを敷き、上からレモンを搾る。 メインは焼き茄子に生姜醤油。茄子は天下の美味であるなあ。 鮭の酒漬け、長芋のとろろ汁、御飯。

"slideshare" にあった、この "Deep C" はすごく勉強になったし、楽しいスライドだった。 実際、今日の午前中はこれを見てつぶしてしまったくらい。 しかし、素直に言って、 ここに例に挙がっているようなコードはそもそも書いてはいけない、 の一言に尽きるような気がする。 ハッカーが言うところの「一回、自分でコンパイラを書いてみれば簡単に全部分かるよ」的な C の深層の知識で、 プログラマの休憩時間の知的雑談には持ってこい、ではあるが。 (「俺は学生時代に三回書いたな。C 自身と Scheme と Fortran で」とか、 「でも面白いのは最適化のところだからさ」とかね。) さらに、C++ について言えば、 このスライドを見て、いついかなる時も使ってはいけないような気がしてきた。

2011年10月10日月曜日

ロールパンのダンス

また 10 時間近く寝てしまった。 珈琲で目を覚まし、しばらく趣味の仕事をしてから、朝食の支度。 冷や御飯にカレー、胡瓜のピクルス、玉葱のレモンピクルス。 朝風呂に入って、湯船で "Dead Famous" (C.O'Connell 著 / Berkley Novel) を読む。 昼寝をしてから、午後は洗濯や掃除などの家事の合間に読書。 「ぼく自身あるいは困難な存在」(J.コクトー著/ 秋山和夫訳/ちくま学芸文庫) を読み返したり。

というのも、チャップリンが「黄金狂時代」から「ロールパンのダンス」の場面を削除しなかったのを後悔していた、 という逸話はどこで読んだのだったかなあ、と気になったので。やはり「困難な存在」だった。 チャップリン映画の中で最も愉快なシーンの一つであり、観客はみんな大喜びした。 観客のアンコールでそこだけ繰り返し上映したこともあるそうだ。 (どんな場面だったっけ、と思われた方のために、YouTube で検索しておいた。 これ "Chaplin in the Gold Rush" (1分02秒)です。) しかし、本人はこれを人目を惹く汚点に過ぎない、と思っていたという。 チャップリンは映画を撮り終えると、「樹を揺さぶって果実を落としておく」とも、 コクトーに述べたらしい。続けて言うには、 枝にしっかりついているものしか残しておくべきではない、と。

夕食は、蒸し鶏の豆苗添え、茄子の煮浸し、ちりめんじゃこにレモン醤油、長芋の味噌汁、 鮭の鮭漬けと大葉の醤油漬けをのせてお茶漬、ヱビスビール。 夜はお風呂に入ってのち、ビールの残りを飲みながら、 コクトーを読み返したりして過す。 前にも書いたが、私は若い頃、「コクトーくらいにならなれるだろう」と思っていた。 青春は赤恥と言うけれど、若いって素晴しい、じゃなくて、恐しい。

2011年10月9日日曜日

「ソウル・キッチン」

さて、今日は何をしようかなあ。 珈琲で目を覚ましてから、御飯を炊き、朝食の支度。 鮭の酒漬け、高野豆腐、茄子の煮浸し、どんこ昆布、長葱と麩の味噌汁、御飯。 朝風呂に入って、湯船で "Dead Famous" (C.O'Connell 著 / Berkley Novel) を読む。しばらく昼寝。また二時間以上寝てしまった。 相変わらずの一日 12 時間睡眠。 ああ、睡眠が一日 6 時間、いや 8 時間で済めば、一体どれだけ沢山のことが成し遂げられ、 どんなにか有意義な毎日が送れることだろうか、いや、きっと変わりはしない(反語的表現)。 かのセネカも、人が時間を粗末にすることを嘆いて、 「誓って言うが、諸君の人生は、たとえ千年以上続いたとしても、きわめて短いものに縮められるであろう。諸君の悪習に食いつくされない時代は、一時代もないであろう」 と、書き残している。

夕方から、東京都写真美術館へ。 先にチケットを買って、カフェで少し読書などしてから、 映画 「ソウル・キッチン」 (F.アキン監督 / 2009年) を観る。 ハンブルクってちょっと興味深い都市だな。

2011年10月8日土曜日

推敲の鬼

ああ良く寝た。珈琲で目を覚ます。 朝食は朝カレー。手製の胡瓜のピクルスつき。 朝風呂に入って、湯船で "Dead Famous" (C.O'Connell 著/ Berkley Novel) を読み始める。マロリー・サーガの第七作目。 ちょっと寝台に横になったら、また二時間以上も寝てしまった。 目覚しの昼食(?)。ブルーベリージャムのホットサンドウィッチと紅茶。 午後はいつもの休日のように読書や、料理の仕込みなど。 茄子の煮浸し、玉葱のピクルスなどを作る。

夕食の支度。メインは蒸し鶏。朝から塩をしておいた腿肉を、生姜と葱の青いところを敷いて蒸す。 その間に冷たい高野豆腐の卵とじを食べながら待ち、 蒸しあがったところで蒸し鶏。 豆苗を添えて、レモンと醤油ベースのドレッシングで食す。 私は長い間、ドレッシングは既製品の方が美味しい、 特に「○ューピー」を侮るな、と主張していたのだが、 最近、悟るところがあって、上手に作れるようになった。 そのあと蒸し鶏で出た汁をのばして塩とレモンで味を整え、 乾麺の稲庭うどんを入れて温麺にする。

夜は私的プロジェクト関連の作業や、読書など。 「十蘭万華鏡」(久生十蘭著/河出文庫)より、「雲の小径」、「川波」を読む。 十蘭は推敲の鬼として知られていて、同じ話を何度も書き直している。 実際、この「川波」に出てくる、 世界大戦の開戦間際に女がドイツの船で、男がシベリア鉄道で、 別々にヨーロッパに向かってパリで逢引をしようとする、という別れ駆け落ちのモチーフ、 別の短篇で何度も読んだような気がする。 その度に全体のストーリィは違うのだが、このモチーフのところだけ、ぴったり同じ。 女の夫がロンドン勤めの名士だとか、 女の実家は 24 歳までに結婚するという掟がある名家だとか、 ディテイルが全く一致している。 お気に入りの材料であるが、この材料をどう料理するべきか、と何度も試したのだろう。

2011年10月7日金曜日

湯治

いつもの朝食のあと出社。 昼食は、鮭と玉葱のマリネのサンドウィッチ。 私が最も美味しいサンドウィッチ・ベスト3の一つに挙げる 「鰯の酢漬けと茹で卵のサンドウィッチ」に偶然ながら、近い味わい。 午後の早い時間に切り上げて、上野駅より新幹線で日帰りの湯治に出かける。

温泉の湯に入ったり出たり入ったり。 単なるストレスのような気もするが、湯治って本当に効果があるのだろうか。 とりあえず、適度な疲労感は得られた。 蕎麦屋で夕食をとって(予定)、帰路につく(現在、その途中のはず)。

2011年10月6日木曜日

思秋期

珈琲で目を覚まして、いつもの洋風朝食のあと、 簡単なお弁当を作って出勤。 不本意だが、医者がもっと食べろと言うので。 昼食は持参のお弁当。 高野豆腐、鮭と玉葱のマリネ、おかかとひじきと胡麻の御飯。 ようやく数値計算が終わった。 計算に一週間近くかかるのは、流石にまずい。 次はせめてマルチプロセス化しようと思って、お試しプログラミング。 夕方、退社してスーパーで買い物をして帰宅。

お風呂に入ってのち、 岩崎宏美の「思秋期」など口遊みながら夕食の支度。 茄子の油焼きに生姜、高野豆腐と小松菜の煮物、御飯の上に鮭の酒漬けと大葉の醤油漬け、 切干し大根と麩の味噌汁。 夜はいつもの通り趣味の私的なプロジェクトの作業をしたり、 だしをとった後の昆布を山椒風味の佃煮にしたり、 「料理歳時記」(辰巳浜子著/中公文庫)を読んだり。 貴重な昭和の食の証言、名著として知られた「料理歳時記」。文庫版は荻昌弘の解説が熱い。

明日は仕事のあと、少し遠出して湯治に行こうかと思う。 不本意だが、医者がもっと自愛するように、と言うので。

2011年10月5日水曜日

秋雨

雨。雨の日は良く眠れる。 モーツァルトのピアノ協奏曲がずっと流れていたような気がするが、 夢現だったので定かでない。 目覚ましの珈琲といつもの朝食のあと、 鮭と玉葱のサンドウィッチを作って出勤。

夕方退社して、近所で散髪をして、帰宅。 夜もまだ冷たい雨が続いている。いい季節だ。 江利チエミの「酒場にて」など口遊みながら、夕食の支度。 「酒場にて」の歌い手はテレサ・テンが一番いいと思うのですが、どうでしょう。 豚角煮丼、もろみ胡瓜、豆腐と長葱の味噌汁。 夜は読書の合間に、料理の仕込み。 胡瓜のピクルスの本漬けをし、鮭と玉葱のマリネを作る。 ピクルス液が余ったのでマリネに使ったりするのが、家庭料理のいい加減さ。

2011年10月4日火曜日

食べ物の話いろいろ

ああ、(いつもの通り)良く寝た。珈琲で目を覚ましてから、朝食の支度。 ハムエッグ、マッシュルームとピーマンのソテー、バタートースト、 ヨーグルトと自家製の林檎ジャム、チョコレートチップ入りスコーン、ロイヤルミルクティ。 昼食用に、胡瓜のサンドウィッチを作って、出勤。 出社したら、まだ数値計算が終わっていなかった。 どうも、オーダ程度しか評価しない悪い癖が抜けない。 現実には、定数倍が時間単位なのか日単位なのかは、大きな違いなのだが。 昼食は持参の胡瓜のサンドウィッチと紅茶。

夕方に退社して、近所のカフェへ。 雑誌「考える人」の秋号(特集は「考える料理」)を読みながら一服。 小説家の川上弘美は知る人ぞ知る、凄腕のおうち料理人らしい。 「これは京都の居酒屋で食べたサラダのまねです」とか、「これは『クウネル』に載っていた料理です」、 などと自分で言ってしまう正直さが好ましい。 美味しそうだが、今から文芸誌の編集者に転職でもしない限り、おうちに呼んでもらえない。残念だ。

珈琲豆を買ってカフェを出て、夕食は近所のベルギービール屋にて。 里芋の豚汁風テリーヌと、ハラミ肉のステーキ、フリット添え。 テリーヌ・ア・ラ・トンジルとは画期的だなあ、と思い、たまたま一階にいたシェフにそう言ったら、 こういうアイデアは既知であるとのことだった。 古典派の家庭料理人なもので、トレンド知らずで申し訳ない。 白ビールを飲みながら、「考える人」で太刀魚のムニエールの写真をしげしげと眺めて、 しきりに感心していると、カウンタの隣に座っていたお客さんから、 「それは『コート・○ール』の S シェフのお料理ですね」と話しかけられた。 さすがファンが多いらしい。

帰宅して、お風呂に入ってから、料理の仕込み。 塩漬けしておいた鮭を焼いて、鮭の酒漬けにする(駄洒落ではない)。 胡瓜をピクルス用に下処理の浅漬けにする。

ああ、いけない。実生活が貧しいものだから、つい食べ物のことばかり書いてしまった。 情けない。反省して明日からは気をつけます。

2011年10月3日月曜日

激痩せ

「古楽の楽しみ」のあと、普段なら二度寝するところを起床して、 朝食抜きで人間ドックへ。午前中一杯、あれこれ計測される。 体重が 50 kg 近くまで落ちていて、ちょっと驚いた。 十代の頃からこんなに痩せたことはない。 夏がなかなか終わらなかったので、節制モードを続けていたからだろうか。 流石に不健康なので、食事の量を増やして行こう。 冬に向けて脂肪をつけないと。 やや不本意だが、軽く昼食もとるようにしようか。

人間ドックは昼食つきだったので、そこで中華料理の食事を済ませ、出勤。 痩せ過ぎだし、血圧も下が 50 台の低血圧だし、さらに血を抜かれて、 バリウムと下剤を飲まされたあとなので、調子が悪い。 特に急ぎの用もなく、先週末に仕掛けた数値計算が丸三日過ぎてもまだ終了していなかったので、 午後も早い時間に退社。帰宅して、少し仮眠。

体重 50 キロでも、今日も夕餉の支度をがんばろう。 豚角煮の小松菜添え、カレーライスにポーチ・ド・エッグ。 食後にロイヤルミルクティと、チョコレートチップ入りスコーン(既製品を温め直したもの)。 がんばると言っても、夕食のあとにスコーンを焼くまでの元気はない。

2011年10月2日日曜日

美食家の生活

カフェオレで目を覚まし、洗濯機に洗濯を任せておいて、朝食の支度。 新米を炊く。秋鮭を焼いて、だし巻き卵、どんこ昆布、小松菜と豆腐の味噌汁、御飯。 朝風呂に入ってから、しばらく寝床で読書。 「我が屍を乗り越えよ」(R.スタウト著/佐倉潤吾訳/ハヤカワ・ミステリ 439) 。

レックス・スタウトのネロ・ウルフ・シリーズが日本であまり読まれないのはなぜだろう。 今、新刊書店で入手できるのは「料理長が多すぎる」くらいなのでは。 英米では「探偵」と言えば、ホームズ、ポワロの次くらいに名前が出てもおかしくないようなのに、 日本ではそんなに知られていない。 私の想像では、「美食家探偵」と言われながら、ワインについて一言も蘊蓄を漏らさず、 ビールばかり飲んでいるのが良くないんじゃないだろうか。

ネロ・ウルフはワインに限らず、食の蘊蓄を特に披露しない。 実際、料理の内容が助手アーチーの視点から時折さらっと描写されるだけだ (寝台でとった、ある日の朝食は 「オレンジ・ジュースと、エッグズ・オー・ブール・ノアールと、 ジョージア・ハムの焼いたのを二切れと、狐色にいためた馬鈴薯をきざんだのと、 ホット・ブルーベリー・マフィンと、それにポットに入った湯気の出ているココアだった」)。 ネロ・ウルフは自分の生活を貫き通すだけである。 自宅から一歩も出ず、決まった時間に家の料理人の作った料理を食べ、 決まった時間に蘭を愛で、誰にもその二つの時間を邪魔させない。 好きなだけビールを飲む。そして、食事、蘭、ビールの三つを守るために手荒く金を稼ぐ。 しかし、それらについて何の講釈もしないし、蘊蓄にも縁がない。 一体、誰に何の説明をする必要があろうか。 今思ったのだが、そういう態度自体が日本で人気がない理由かも。

午後は掃除、洗濯、料理の仕込みなど、家事のあれこれ。 高野豆腐を煮て、小松菜を軽く茹で、さらに豚角煮を作った。 夕食は豚角煮、小松菜のひたし、高野豆腐の卵とじ、長葱と豆腐の味噌汁、御飯。

2011年10月1日土曜日

「プリザービング」、保存食の奥義

涼しくて良く眠れる。昼寝もいれれば一日の半分以上寝てしまいそう。 カフェオレで目を覚ましてから、朝食の支度。週末なので和風。 鰤のあら煮、だし巻き卵、どんこ昆布、切干し大根と若布の味噌汁、生姜御飯。 お風呂に入ってゆっくりしてから、昼寝。 夕方までしばらく読書や、私的プロジェクトの作業など。 暗くなってきたので、夕食の支度。 夕食のメインは湯豆腐。鰤のあら煮の最後の残りで、日本酒を五勺ほど。 あとで小松菜と長葱の煮麺。

最近、保存食に興味がわいてきて、簡単なところから試したり、本を集めたりしている。 すると、知り合いの方から、「プリザービング」(O.シュウォーツ著/山と渓谷社) という本を推薦された。 調べてみると、既に品切れになっていて、古書市場で倍から三倍の値段がついている。 ずいぶん悩んだのだが、「これは投資だ」と自分に言い聞かせて購入。 そして、はっきり言おう。これは名著だ。 野菜、果物、肉、魚、様々な保存食の原理と原則、 基本技術が丁寧に解説されている。 作り方だけではなくて容器の封じ方など、周辺技術も詳しい。 美しく分かりやすい写真が一杯入っていて目にも楽しいし、 索引もしっかりしていて真面目な本作りがうかがわれる。 専門店でも開けそうな本格派だが、 それでいて、料理の専門書にありがちな、 「言いたいことは分かるけど、普通の暮らしをしている素人には無理でしょ」 というところはなく、実践的。

著者はイスラエル生まれのイギリス育ち(名前のシュウォーツは Schwartz, つまりシュワルツ)。 スパイスから想像されるように、どうやら中東は保存食の本場らしい。 著者はイギリスに移住して、 中東ならどこにでもある保存食用の材料がないことに一度は落胆したものの、 そこで現代的かつ西洋的なレシピに工夫していったとのことである。