8 時起床。 カフェオレ、トースト、ソーセージエッグの朝食のあと出勤。 午前、午後とお仕事。 昼食はビル一階弁当。 昼休みには運動に新刊書店まで歩き、 「老年について」(キケロー著/中務哲郎訳/岩波文庫) を買って社に戻る。 今日も老人なりに身体を労わりながら、休み休み働き、 18 時過ぎに退社。 スーパーで食材などを買って帰宅。
夕食は、茸あれこれのアーリオオーリオ、 出来合いのツナサラダ。かにのマークのリースリングを一杯だけ。 食後にお風呂に入って、 湯船で「システムづくりの人間学」(G.M.ワインバーグ著/木村泉訳/ 共立出版)を読む。 夜は、ルイス・キャロルの「枕頭問題集」の翻訳作業など。
キャロルの「枕頭問題集」の最後の問題は、以下のようなものである。 「袋に二つの小石が入っていて、 分かっているのは各々が白か黒であることだけである。 袋から小石を取り出すことなく、 それぞれの色を言い当てよ」。 どう考えても、この問題に答えることはできない。 確率的な主張をするにせよ、 何の仮定もない以上、黒だか、白だか、まったく確率は不定である。 しかるに、答を見ると「一つは黒で、もう一つは白。」と断言されている。 まあ、それは良かろう。 実際、一つずつ黒か白かを半々の確率で袋に入れたのだ、と仮定すると、 黒黒、黒白、白黒、白白の四通りが同じ確率で現れるだろうから、 一つは黒で一つは白の確率が 1/2 で、可能性としては最も高い。 この問題はそれ以上でも以下でもない、と現代人の私には思われる。 しかし、奇妙なのはキャロルによる、この問題の「解説」である。 キャロルによれば、こうだ(私が少し、分かり易く書き直してある)。
もし袋の中に小石が 3 個入っていて、 二つが黒で一つが白だとしてみると、 ここから一つ選んだ小石が黒である確率は 2/3 である(もちろん、これは正しい)。 そして、三つから一つ取り出したとき黒である確率がこの 2/3 になるのは、 二つが黒で一つが白のときに限られることに注意しておく (これもまったく正しい)。 さて、もとの問題に帰って、袋に小石が二つ入っている状況を考えると、 小石の色の組み合わせ「黒と黒」「黒と白」「白と白」の確率は、 順に 1/4, 1/2, 1/4 である(上に書いたように、これも自然な仮定のもとでOKだ)。 ここで袋の中に黒石を一個追加してみよう。 とすると、「黒、黒、黒」「黒、白、黒」「白、白、黒」 の確率が順に、1/4, 1/2, 1/4 ということになるはずだ。 さて、この状況で袋から小石を一個取り出してそれが黒である確率は、 1/4 * 1 + 1/2 * 2/3 + 1/4 * 1/3 = 2/3 となる。 しかし、これは最初に指摘したように、 袋の中に黒石が 2 個、白石が 1 個あるときに黒石を取り出す確率に等しく、 この確率になるのはこの組み合わせのときしかない。 よって、袋の中には、黒石が 2 個、白石が 1 個あるのであって、 つまり、黒石一つを入れる前の元の状態は、 黒石と白石が一つずつだったのである。証明終わり。
もちろん、この「証明」はジョークであろう (このことを明確に指摘している訳書や解説書は、今のところないようだが)。 しかし、現代の数学者としての私の疑問は、 この奇妙な「証明」の教訓は何であろうか?