2009年6月28日日曜日

白玉と鬼 / 黒い白鳥

27日(土曜)。少し寝坊。珈琲、オレンジジュース、トーストの朝食。 いくつか家事のあと、朝風呂に入って、身支度をし、外出。 駅弁を買って新幹線に乗る。 車内でお弁当を食べながら、 「伊勢物語」(石田穣二訳注/角川ソフィア文庫)と、 「ブラック・スワン (上、下)」(N.N.タレブ著/望月衛訳/ダイヤモンド社) を交互に読む。 「伊勢物語」は、坂口安吾がその中に出てくる物語について評論に書いていて、 ちょっと読みたくなったので。

わずか 1 ページにも満たない、こんな短い話である。
ある男が、とてもわがものにできなかった女に何年間も求婚し続けて、 ついにさらい出し、暗い夜道を二人逃げて行った。 芥河という川のほとりまで来たとき、 草の上の露を見て、女が「あれは何」と男にきいた。 このあたりには鬼が出て、もう夜も更け、雨も降り、雷もひどく鳴る中、 答える間もなく、男は女を連れて荒れ果てた蔵まで来た。 男は女を蔵の中に入れ、自分はその前で武器を持って番をしたのだが、 鬼が早速、一口で女を食べてしまった。 女は悲鳴をあげたのだが、雷の音に男は気付かなかった。 夜が明けて、見ると、連れてきた女の影もない。男は、いたく泣いて、こう詠んだ。 しらたまかなにぞとひとのとひしとき つゆとこたへてけなましものを (白玉ですか、なんですか、とたずねたとき、 露だよ、と答えて、消えてしまったらよかったのに)。

この物語がどうにもすごい、すごすぎる、ということなのだが、 そうこうしているうちに到着。 ホテルの部屋で、お風呂に入ったり、「ブラック・スワン」を読んだり。 夜は市役所近くのビストロにて、 R 大から K 学院大に移られた方と、R 大から D 大に移られた方と、 R 大から A 社に移った私とで、A 堀先生のお誕生月を祝う会。 私は海老と茹で卵のサラダ、牛の胃のパン粉焼きなど。 関西主要私大の内部情報を色々と聞かせていただたく。 ところで A 堀先生はちょっとお疲れなんじゃないだろうか。 さすがの野望と戦略とごり押しと寝技の男にも、蹉跌はあるのかも知れない。 一般論だが、大組織はそうそう自分から変化できるものでない。 本当の変化や改革は、ハゲタカ・ヘッジファンドにまるごと買収でもされない限り、 ありえない気がする。 そのあと、梯子につぐ梯子で、A 堀先生になかなか帰してもらえず、 宿に戻ったのは深夜 2 時。 折角だから挨拶まわりしたいところもあったのだが、 A 堀先生の杯を断るわけにもいかず、やむをえなかった。

28 日(日曜)、9 時半起床。 ルームサーヴィスの朝食。ベーコンエッグ、ポテトとトマト、果物類と、パン類あれこれと、 珈琲とオレンジジュース。 朝食を食べながら、報道 TV ショウを観つつ、日経新聞を見つつ、ビジネスマンの真似。 良くて無意味、悪くて有害な情報ばかりだったが、コスプレ気分は味わえた。 あとは、チェックアウト時間の 14 時まで、のんびり読書。 湯船や寝床で「ブラック・スワン」を最後まで読む。 以前に原書を読んだのだったが、再読の価値があった。 まあ、そこまでガウス分布自体を非難しなくていいとは思うが。 駅のデパート地下でお弁当を見繕って、新幹線で東京に戻る。 車内では「伊勢物語」などを読んだ。

夕方の東京は雨。雨に濡れて帰宅。早速、お風呂に入る。 湯船で「ギリシア哲学者列伝(上)」(ディオゲネス・ラエルティオス著/ 加来彰俊訳/岩波文庫)を読む。 夕食は、一昨日、N さんからもらったパセリを使って、アーリオオーリオ。 ロースハムと胡瓜のサラダなど。白ワインを一杯だけ。