8 時起床。曇り空。 珈琲、トースト、モッツァレラ、ライチの朝食。 朝風呂に入ってから、掃除機がけ、掃除など。 数日分のだしをとるついでに素麺つゆを仕込んでから、 近所のスーパーまで食材の買い出し。 外はまた日が差してきて、蒸し暑い。 昼食は、しめじと菠薐草と油揚げの冷たい煮浸し、 ポテトサラダなど残りものと、素麺。 素麺つゆは、一番だしを醤油と味醂でわったものに追い鰹して作った。 実家では昔、さらに小海老と椎茸などを入れて、 冷蔵庫に一晩くらい置いてあったが、 さすがに今の人はそんな面倒なことはしないよなあ。
午後は昼寝。そのあとは夕方まで、 「数学は最善世界の夢を見るか?」(I.エクランド著/南條郁子訳/みすず書房) を読んだり。また、きのこのマリネを作ったり、 胡瓜と人参と大根のなますを作ったり。 夕食は豚肉生姜焼き、さらし玉葱に鰹節と自家製ドレッシング、 蕪の酢漬け、若布と油揚げの味噌汁。 食後に林檎のコンポートとチーズ(ブリヤ・サヴァラン)、 赤ワインを一杯だけ。 夜は、G.K.チェスタトンの 「新ナポレオン奇譚」(高橋康也・成田久美子訳/春秋社) を読む。
「新ナポレオン奇譚」はチェスタトンが書いた有名なSF(?)小説だが、 名前を知ってはいても読んだことのある人はあまりいないはずだ。 実際、今は古書でしか手に入らない(私が持っているのは昭和 53 年刊)。 舞台はおよそ百年後の未来のイギリス、丁度、現実の今くらいである。 未来の(つまり、今の)イギリスは 20 世紀初頭のイギリスと何の違いもない。 唯一の違いは、 あまり起こらなかったことが一度も起こらなくなったことくらいだ。 例えば、軍隊や警察の意味は徐々になくなったが、 廃止するのも面倒なので残っている。 政治的には、 「最も純粋な民主主義」または「幻想抜きの愚民専制政治」に到達した。 つまり、官僚の一人がランダムに「国王」 (君主、首相、大統領)に任命され、任期中その職務を勤める。 実際誰も、誰が新たな支配者になろうが気にはしないし、 気にする必要もなければ、理由もない。 民主主義は万民が同等に聡明である、 または同等に愚かである、という事実に基いているのだから、 その中から他の者と大差ない一人を選んでいけない理由があるだろうか。 つまり、陪審員制度が拡大されただけなのだ。 そもそも、普通の民主主義はリーダーを選ぶことについて、 これまでランダムチョイス以上のスコアを上げてきただろうか。 素直に言ってランダム以下、もしやずっと下、だったのでは? 一方、歴史上の国家の多くは世襲制だったが、 それだって、支配者の子供を次の支配者に選ぶという「運まかせ」ではないか。 専制政治はこれまでランダムチョイス以上のスコアを上げてきただろうか。 素直に言ってランダム以下、もしやずっと下、だったのでは? それがここに至って、民主主義と専制政治の理想が最高の形で実現したのである。 それにこの新システムでは、 すぐ新しい「国王」がまたランダムに選ばれる、という利点もある……。